連載「相場のこころ トレードの本質」その18

攻めか守りか その3
 
※この連載は、林投資研究所のメールマガジン(登録無料)で同時に配信しています。
 
 
昔から相場師たちが金科玉条としてきたのが、「片玉2分の1」という資金管理の発想です。重要なことだと思うのですが、多くの投資家が最も納得しない考え方です。
 
片玉、つまり「売り」または「買い」のどちらか一方だけで、トレード資金の50%を超えてはならない、という意味です。主に、1つの銘柄に集中してポジションを取ることを想定した資金管理の基準なので控えめになっているはずですが、「それにしても、半分も余らせておくなんて……」と多くの人が反論します。
 
しかし、個別銘柄の変動が意外に大きいことを考えると、手が合わずに負けが続くケースを想定して、稼働率を低く抑えておくべきだという結論になるのです。
 
資金いっぱいにポジションを取った場合、1割の逆行で総資金の1割がなくなります。1割逆行で損切りという結果が2回あれば、総資金の2割が消えてしまうのです。
 
2割減は厳しい状況です。だから、損切りに抵抗を感じます。そして、傷口を広げてしまうことになりやすいのです。つい意地を張り、自分の都合で考えて判断してしまう……そんなサイアクの状況に陥る可能性を確実にゼロにするために、稼働率に神経を使うのです。
 
うまくいった場合の利益を考えてみましょう。
仮に、3割の変動に乗って値幅の半分を取ったとすると、15%の利益です。それを年に2回と仮定すると、合計で30%の利益。ただし、資金の半分しか稼働させないので、総資金に対する利益率は年間で15%です。
 
「15%なんてミミッチイ……」と思う人が多いのですが、手堅い利益を狙う、「確実な利益」なんてないけど「着実に」取る、常に資金が余っている状況で気持ちのゆとりを維持する、ポジションなしの爽快かつ中立な期間をつくる、等々、プロならではのこだわりを数字に落とし込んだのが、「最高で50%の稼働率」というルールなのでしょう。
 
中源線建玉法でも、Maxの稼働率が50%という規定です。
しかも、3分割で満玉になったときに50%を超えないというルールですから、平均すると非常に低い稼働率が実現します。以下は、中源線書籍からの引用です。
 
1.総資金は、2倍を用意する
2.そして3分割法を堅く守る
すなわち、1/3建玉は総資金の1/6となる。
(『新版 中源線建玉法』第二部 本文より)
 
証券ディーラーは、「月」単位で成績を求められます。
一般的な投信は、設定に沿って買ったまま放置です。
一部のファンドマネージャーは、高額な報酬を狙ってリスクを取り、「失業するか10億円もらうか」のゲームを行います。
 
でも個人投資家は、すべて自分のカネです。
相場が生業の場合は、その資金がなくなったら、いや大幅に減った時点でゲームオーバーです。だから、絶対に死なない、マーケットから退場させられないことを第一に行動します。
 
パチンコ感覚で遊ぶなら、小さい金額でムチャな張り方をすればいいのですが、資産運用を行う、その練習や実験をするのなら、一匹狼のプロ相場師をマネして、負けない張り方を心がけるべきです。
 
自分だけの事情でシナリオを描いて失敗するケースが目立ちますが、「自分の都合」の使い方が悪いのです。「自分の都合で休む、資金を余らせる」という発想を、納得できないながらも、一度考えてみてください。
 
休むことができる──プロアマ問わず、個人投資家だけに与えられた特権です。
そんな守りの姿勢によって、いつでもポジションを増やすことができるのです。
つまり、常に「攻め」の選択肢を持っているということです。
 
 
林 知之